110-026 | 一番早く加速するには、レッドゾーンギリギリで変速するのがいいの? |
メルマガ「クルマとカー用品の常識 ウソ? ホント?」第15号掲載 |
一番早く加速するには、レッドゾーンギリギリで変速するのがいいの? |
オートマに乗っておられて、移動手段として車を使っていらっしゃる方には、ちょっと関心のないテーマかも知れません。 でも、よく「オレはレッドゾーン寸前まで引っ張ってからシフトチャンジしているぜ!」というような話を聞きますが、果たしてそれが最速の加速法なのでしょうか? 中にはレッドゾーンに入っても、まだ回転を上げている人もいるようですが、それがダメなのは皆さんもおわかりではないでしょうか? どこまでも回して良いのであれば、車には変速機が必要無いことになるからです。 何しろミッションが無ければ相当軽量化もできるし、シフトチェンジに必要な時間のムダも防ぐことができます。 それが、わざわざ重く複雑なミッションを搭載しているというのは、エンジンには許容される回転範囲というものがあり、エンジン保護のためにもミッションでその範囲を超えないように使わないといけないからです。 では、レッドゾーン寸前まで回すとどうでしょうか? 何だかこれが最速の加速法のような気がしますよね?(何たって音がそういうカンジになります) でも、レッドゾーン寸前が最高出力を発揮できるわけではないのです。 ということは、最高出力回転数で変速すればいいのではないか?という仮説ができあがります。 どうです、皆さんもそう思いますか? 何しろ「最高出力」が出せる回転数なんですから。。。。。。 さて、変速は何の為におこなうかを考えてみたことがありますか? それは、特に今回のテーマのようにスポーツ走行を前提としている場合、素早い加速をおこなうためなのです。 言い換えれば、変速した後の加速力を大きくするために変速するわけです。 では、変速した後の加速力について考えてみましょう。 加速力というのは、そのエンジン回転数で出せる余ったトルクによって決まります。 ということは、最高出力ではなくトルクを中心に考えなければ加速ができないということになるのです。 しかも、加速した直後に大きな余剰トルクが期待できるようにするためには、どう考えればよいでしょうか? それは変速後に、最大トルクを発生させる回転数を中心にした回転数になるようなところで変速するということになるのです。 例えば、3,000回転で最大トルクを発生し5,500回転で最高出力を発生するエンジンで変速比が1.5だったとすると、変速後に3,000回転になるポイントである4,500回転の時に変速すれば良いことになります。 え!たったの4,500回転で変速したら引っ張れないじゃないって声も聞こえそうですが、上記のようなエンジンの場合は、ある程度の速度までは、このほうが早いのです。 もっと厳密に言えば、カタログなどにあるトルク曲線を見て、各ギアごとのギア比もわかれば、最大トルク回転数になるように変速する方法以外にも、トルクピークとなった回転数を含めてトルク曲線で描かれた面積が最大になるように最大トルク発生回転数より上下にずらした変速後の回転数を見つけ出すことができるのです。 そのトルク曲線によって描かれた面積が大きいほうが加速が早くなるということなのです。 ちょっと、これは文章だけで説明するのは、わかりにくいでしょうから、いつか機会を見てHPにて画像を交えてご説明できるようにしたいと思いますのでお楽しみに。 というワケで、今回のテーマの回答はウソです。 オマケですが、同じエンジンで3,000回転から4,000回転までと6,000回転から7,000回転までどちらも1,000回転ほど加速する間の所要時間が同じだと、どちらがより加速しているでしょうか? え!同じ1,000回転ほど増やしたんだから同じだろうって。 ちょっと残念です。 回転数の上昇と速度の上昇との関係は絶対値の変化量ではなく、前後の比率で考えないといけないのです。 したがって、最初のほうが1.33倍になっているにもかかわらず、後者は1.17倍にしかなっていないのです。 ということで、同じ所要時間で1,000回転上昇したとすると、確実に前者のほうがより多く加速しています。 これは、タコメーターを見ながら加速すると、つい勘違いしてしまいがちな落とし穴なのです。 さてさて、わかっているようで、実にわかりにくいトルクとパワーの関係ですが、近いうちに取り上げてみますので、それとあわせて考えていただければ、さらにわかりやすくなると思います。 |