030-010 オリジナルウーファーBOXのウソ 2007.2.4修正
 ちょっと話づらい事をこれからご紹介します。
 世間にはオーディオプロショップと呼ばれているお店は結構あります。
 そして、その中にも当然優秀で良心的なお店はあります。
 ところが、すべてのお店がそうではないというのは、世の中でよく聞く、いろいろな業界の話と同じなのです。
 今回は、ある商品をご購入いただいた方からの素朴な疑問にある、そのような偽りのプロのウソトークについて解説します。

 よくプロショップでは、そのクルマに合わせたオリジナルスピーカーボックスというのを製作しています。
 わたしもディーラー勤務時代から、いろいろ作成しました。
 その事自体は、そのクルマやその方のクルマの使い方に合わせるコーディネートなので問題は無いのですが、問題はその作成したボックスの付加価値を上げるためにウソで固めたトークをおこなって、他のお店より高い価格を納得させようとすることにあるのです。

 その方がプロショップでボックスの製作を依頼すると、徹夜明けでも眠れなくなりそうな価格を提示されたそうです。
 その理由として

 1.使用している木の材質が良いこと
 2.仕上げの質感を重視していること
 3.使用するスピーカーにベストセッティングになるように、きっちり容量を計算していること

 という3つを説明されたそうです。
 まあ、今回は1と2は棚上げして、確信犯的理由の3を説明します。

爆弾その1 {容量計算できるのは、限られた条件のボックスだけ}
 いきなり結果を書いてしまいましたが、実は容量を最適化するために計算値をはじき出せるボックスには条件があります。
 それは直方体、もしくは立方体という形状に限られるのです。(四角な立体ということです)
 クルマの場合、形状やシートなどの干渉を防ぐために、フロント部分が傾斜しているケースが市販品、オリジナル品とも多いのですが、こういう形状では事前に計算で最適化することはできません。

 さらに止めを刺すと、密閉型のスピーカーボックスでないと計算できません。
 よく低音のヌケや重低音を出すために、バスレフといって、穴を開ける場合があるのですが、こういう形状やパッシブラジエターという配線をつないでいないスピーカーを装着して低音を出しやすくする構造では立方体や直方体であっても計算できないのです。
 
 ですから、計算できる形状以外のボックスを依頼して、計算できるなどと言うトークをおこなうところや担当者は、間違いなく音響の基本を勉強されていない証拠なのです。

 では、密閉の四角のボックスであれば、計算できるのでしょうか?

爆弾その2 {それでも計算できない場合がほとんど}
 容量計算するには、当たり前のことではありますが、スピーカーのスペックがわからなければ計算なんてできないのです。
 ところがそのスペックが公表されているスピーカーは、ほんのわずかで、市販で出回っている商品のほとんどは、実はスペックが公表されていません。
 え?カタログにいろいろ書いてあるじゃないの!と思えそうですが、あのような周波数特性とか耐入力とかではなく、最低共振周波数とか動く部分の質量(重量と呼ばないのが、なんだか学術的でイヤですが)など様々なデータがわからないと計算なんかできないのです。
 お手元のカタログを見てください、そういう数値を公表しているのは、ごく限られた商品だけなのが、多分お分かりいただけると思います。
 したがって、そういう条件が合わない限り、計算して作るなんて言えないわけです。

 では、どのようにセッティングするかと言えば、結果から逆にプロセスを変えていくしかないのです。
 バスレフという穴なんかまさにその典型で、直方体などで計算できるスピーカーであれば、計算でボートの口径や長さを事前に計算できることにはなっていますが、実は材質だけでも大きく違ってくるのです。
 そうなると、ポートの口径や長さをカット・アンド・トライで追い詰めていくしかないのですが、ここでアナライザーなどの音場測定器が活躍することになります。
 しかし、そこに現れている数値やカーブの原因を理解できないと最適化などはできませんから、現実にはアナライザーがあれば良いというのではなく、理論がわかるオペレーターという組合せが必要になるのです。


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