010-029 夏に使用しないスタッドレスタイヤは、空気圧は高めにして保管するのがいいの?
メルマガ「クルマとカー用品の常識 ウソ? ホント?」第19号掲載
 よく質問を受ける保管法については、タイヤメーカーのカタログなどにも記載されており、直射日光、雨、水、油脂類、熱源、火花の出る装置を避けて常温で保管すればいいのですが、以前面白い質問があったので、今回はそれを取り上げます。

 というのは、その方の質問が、先ほど書いたような内容ではなく、保管には立てて置くのが良いか、寝かせておくのが良いか、タイヤをホイールから外して保管するのが良いのか、そのままホイールに組み込まれた状態で保管するのが良いかという、ちょっと珍しい質問だったのです。

 それでは、早速説明しますが、ホイールから外して保管するのが良いかどうかについてですが、タイヤというのはホイールへの脱着をおこなう度に、タイヤのビード部分に負担をかけるために、基本的には組替え作業自体は、何度も頻繁に繰り返さないほうが良いのです。
 これは、タイヤの種類、ホイールとタイヤ幅の関係、チェンジャーの種類、そして作業者のウデによってかなり違い、1回の作業でタイヤとして使用するのが望ましくない状態になる場合(これは作業ミスです)から、10回程度脱着しても通常使用であれば全く問題ない場合もありますが、基本的に余計な作業は避けたほうが賢明です。

 では、ホイールに装着された状態で保管するとして、立てておくか寝かせておくか、空気圧はどうするかということを考えていきましょう。
 本来、空気圧を規程値にして使用しているタイヤなので、意外な感じを受けられるかも知れませんが、空気を充填している状態というのは、内部構造には負担をかけているのです。
 特に、外部から直射日光などで紫外線やオゾンを取り込んでいる状態であれば尚更で、本来は空気圧をかけていない状態のほうがタイヤ構造自体のストレスは減少します。
 「それじゃあ、クルマに装着して使えないじゃないか」と言う意見も聞こえてきそうですが、ギターの弦も同様で、使用していない時だけ緩めるというのと同じニュアンスで、使わないときの負荷を和らげるために保管時の空気圧を基準値どおりにしておかないと考えていただければいいのではないのでしょうか?

 では空気圧は、大気との圧力差0となるように完全に抜ききっていいのでしょうか?
 実は空気圧だけのことを考えると、抜いても差し支えないのですが、実際には保管方法との問題になってくるのです。
 というのは、ホイールつきのタイヤを保管するためには、当然立てるか寝せるかしなければならなくて、空中に浮かべておくことなんてできないので、その保管方法を考えなければいけないのです。
 クルマに装着して、長期間放置しているような場合、徐々にタイヤの空気圧が低下して、タイヤの接地面がつぶれたような形状が顕著になることがあります。
 その放置した期間がそれほど長くなければいいのですが、ホントに長期間にわたったり、タイヤがある程度劣化しているような状況の場合、後日空気圧調整をしても、元の形状に戻らなくなることがあります。
 これは、走行中にブレーキをロックさせてしまい、タイヤの一部分だけ削れて生じる「フラットスポット」とは違うのですが、この変形によって安全性の低下や走行中に振動が生じることになるケースが稀にあります。
 クルマに装着したままの場合、1本のタイヤにかかる重量は200〜500kgほどですから、タイヤ&ホイールだけの場合は、ここまで極端な影響は無いとしても、そういう外からの変形を防ぐためには、空気圧ゼロというのは理想的な保管方法ではないのです。
 よく、カーショップなどではタイヤラックというパイプで組み立てられたラックにタイヤを立てて保管されていますが、これなんかでもよく見ると、パイプの接触部分だけ変形していることがあります。
 細かいことですが、こういう影響を減らすためには、ああいう構造のタイヤラックは避け、空気圧も外からの力でタイヤ表面が変形しない程度の規定値の半分よりやや少なめ空気圧にして保管するのが良いと思います。

 立てるか寝かせるかについては、微妙な違いもあるのですが、これまでに書いた内容よりも影響が少ないために、立てる場合も寝かせる場合も平面で乾いた上で保管していただければタイヤを痛めにくくなります。(斜めに立てかけて、タイヤの側面の一部分だけ壁などに接触するのは避けてください)
 というワケで、今回も長くなりましたが、テーマへの回答としては「ウソ」です。

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